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INTERVIEW
インタビュー

城妃美伶さん タンゴ、そしてこれからのこと その1

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高橋(以下 T)城妃さん、お帰りなさい。そしてお疲れさまでした。
アルゼンチンにはどれくらい滞在されたの?

城妃(以下 S)ちょうど1か月くらいです。退団してからほぼ3か月たつんですがその半分以上は海外で過ごしました。ブエノスアイレスに着いた時、2年前からタンゴに恋して恋して「ああ、ついに来たか!」という気持ちでした。そして私の人生が変わるほどの衝撃を受けたんです。

T あなたはタンゴに惹かれてブエノスアイレスにはるばる行かれたわけなんですが、あなたとお会いしたとき、そのタンゴの知識と熱量に本当に驚きました。若い方でここまで勉強してる方がいるんだなと。今日は、まず、タンゴとの出会い、そのあたりからお話し聞かせていただけますか?

S 私ちょうど2年前に、『Senhor CRUZEIRO(セニョール クルゼイロ)!』—南十字に愛された男—という公演がありまして、水美舞斗さんが主演の作品だったんですが、この作品との出会いが本格的にタンゴと出会ったなれそめです。元々、宝塚ではタンゴのダンスのシーンがさまざまな作品で使われていますよね。私はペアダンス、デュエットダンスが昔から好きでしたし、憧れてもいました。先生から「次回のセニョール クルゼイロにはタンゴのシーンがあるんだよ」とお聞きして、「ぜひ入れてください」とお願いしたんです。「ポーの一族」東京公演中、本番が終わるとその足で、タンゴのプライベートレッスンに通い始めました。

T あなたは何歳からダンスを始めたの?

S 4歳からクラシックバレエを始めました。そのあとも宝塚でいろんなジャンルのダンス、舞踊を経験していたんですが、初めてタンゴスタジオに足を踏み入れた時、その世界観、音楽、ダンス、全てに衝撃を受けたんです。その晩は興奮して眠れないほどでした。惹き込まれて惹き込まれて・・そして実際のレッスンの時に、最初まったくフロアをステップを踏むどころか、歩くことすらできなかったんです。なぜ、私にできないんだろう?歩くだけでこんなに難しい。どんどんその難しさ、奥深さに惹かれていったわけなんです。そうして無事公演が終わりました。でも自分の中でタンゴの炎が燃えさかってしまい、この音楽の魅力、魔力から今も抜け出せそうもないのです。今の自分は水深で言うと2mくらい。海のように大きくて深いタンゴの世界をもっと知りたくて、ブエノスアイレスに向かったのです。

城妃美伶さん タンゴ、そしてこれからのこと その2

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S 私、もともと、すごく好きになってしまうと、のめりこんでしまうところがあるんですね。退団の時のご挨拶でも「宝塚に恋しました!」とお話ししましたが、その恋の炎がタンゴに燃え移りまして(笑)今、タンゴに恋しているわけなんです。

T それは当分消すことができない炎でしょうねぇ。私がブエノスアイレスにグランタンゴの仕事で行った時に丁度あなたがブエノスアイレスにタンゴを学びにいらした時でした。あなたの瞳はキラキラ輝いていましたね。

S 今回、一か月の滞在でしたが、ブエノスアイレスで感じたことは本当に数多くありまして。
まず「タンゴはアルゼンチンの、いやブエノスアイレスという街の音楽なんだ。ここに住む、ここで生活する人々のものなんだ」と改めて感じました。
自分のこれからの人生とタンゴとの接点、いろんなものを学ばせてもらって、いかに私自身の血と融合させていくことがができるかという大きな課題にも気づいたんです。

T 城妃さんは、ダンスだけじゃなく歌も学んできたそうですね?しかも元オルケスタ・ロマンティカ・ミロンゲーラの人気女性歌手に!?彼女は80年ぶりに「ポエマ」をリバイバルさせたことで話題になりました。

S そうなんです!マリソル・マルティネス(Marisol Martínez)さんというとっても美しくて声が魅力的な素晴らしい歌手の方と偶然出会いまして。
ある日、私が踊りに行ったミロンガ(ダンスパーティー)で歌ってらしたんです。初めて彼女が歌い出した瞬間、私のセンサーがビビビ!!(笑)と作動しまして。「なんなんだろう、この声は!」それは宝塚と出会ったときのような衝撃でした。いてもたってもいられなくなりまして、歌い終わった彼女のもとに突進!(笑)走り寄って片言のスペイン語とジャスチャーでありったけの想いを伝えました。「あなたの歌は素晴らしいです。ファンになりました 私に歌を教えてください、タンゴを教えてください!」
きっとマリソルさんは驚いたでしょう、でも私の真剣な思いをくみ取ってくださって、歌のレッスンをしてくれることになったんです。

T すごいなあ、好きということがその行動に走らせたんだね?

S タンゴを歌うということがどういうことか、歌う前に「タンゴの魂」を感じること、そこからレッスンは始まりました。

城妃美伶さん タンゴ、そしてこれからのこと その3

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S マルティネスさんに歌をみていただこう!なんて、まあ突撃型の性格だからか、そんなことを思いついたのかもしれませんし、マルティネスさんが私の想いを受け止めてくれたんでしょうね。
「タンゴを歌う」というのはどういうことか、まずその根本からです。歌が上手いとか下手とかいうのではなく、そもそも「歌を歌う」ことの一つのジャンルに「タンゴを歌う」のではないんだということ、これを学びました。
マルティネスさんは「タンゴはいつもあなたの為にここにある」とおっしゃるんです。人生をかけてタンゴを愛するということ、これなんですね。

T タンゴは強い憧れ、絶望、喜び、哀しみ、あきらめ、うらみまでを3分に圧縮して歌う音楽だけれど、こんなに激しく言葉にぶつけるジャンルはないからね。

S 実際勉強してみるとなかなか消化するのが難しいです。
タンゴが海だとすれば、深すぎて、学びたいと思うほど、その深さを思い知らされるんです。
歌う時に一つ一つの言葉(歌詞)の意味を調べて、その歌の時代背景だったり作者の意図だったりを辿りながら、その言葉の重さをかみしめていかねばと思っています。

9年間 走り続けて、宝塚を退団して1回私は立ち止まりました。それはとっても大切な時間でした。新幹線、飛行機から下りて、私は徒歩で歩きました。ニュージーランドという土地で見えた景色、これからの人生も。
ところがどうでしょう、
ブエノスアイレスに行ったら「止まっている場合じゃない!」と(笑)

今までの経験を活かして飛躍すること、これから学ぶべきこと、自分なりに歩みを確かに進んでいきたいと思います。

T ぜひあなたのタンゴを聴かせてくださいね、楽しみにしています。